[2019年3月]
春告げる川面の柳揺れる朝
   衿もとを立て学生急ぐ    
光峰
[2019年4月]
幾とせを顧み祝う誕生日
   大空高く鯉のぼり飛ぶ     
明治より生き抜いてきた桜木よ
   わが家の安寧見守ってくれ    
10連休大盤振る舞い日々終えて
    質素倹約暮らしに戻り    
光峰
[2019年5月]
静かなる鳴瀬のほとり夕の暮れ     
   家の明かりや川面に浮かぶ    
紫陽花の鮮やかな花見入る朝
   今日の予報を気にとめながら   
夕暮れの低空飛行目の前を
   あしたは雨かつばめ予報士    
光峰
[2019年6月]
震災を知るか知らぬか山帽子
   節の便りを届けて来れし     
静かなる待合室やお昼時
   優しく響く看護師の声     
帰る時「また来るね」って手を握る
   親子の絆深く幸あれ       
光峰
[2019年7月]
敗戦に永遠(とわ)の平和を誓うとき
   天まで届け民の願いよ      
介護職平和が故にある仕事
   お風呂の介助幸せの証し     
巡り来る母と逢えるや 盂蘭盆会
   何処の道を旅すことやら     
光峰
[2019年8月]
「これからは年金だけじゃ暮らせない」     
    短冊にみる老後の現実     
盆も過ぎ施設行事のバーベキュー
   皆んな食欲いつもより増し    
鳴けよ鳴け夏の終わりのお昼時
   命を繋げミンミン蝉よ       
光峰
[2019年9月]
気まま旅見知らぬ土地を訪ね居り   
   もてなしさり気爽やかな秋   
人生の喜怒哀楽生抜いて   
   敬老会に童顔笑増し   
潟沼のさざ波寄せる音静か
   硫黄のにおい秋は深まり   
光峰
[2019年10月]
巡り来る秋のひととき夕の暮れ
   色づく柿を窓越しにみる   
裏山の匂ひ漂う栗の花
   ひと夏過ぎて今実りたり   
自然には勝てぬ水増しまた来たり
   泥にまみれる日暮れの早し   
光峰
[2019年11月]
友の顔一面トップ朝刊に   
   道一筋の黄綬褒章    
憂いなし安全第一備えたる   
   早めに終えるタイヤ交換   
震災で家は流され妻見つからず
   息子と暮らすと互市の客    
光峰
[2019年12月]
軒先のころ柿の実黒ずんで
   肌の疲れや鏡の向う        
待ちわびる聖夜の企画ページェント
   ケヤキの並木は人人人        
日めくりや時を刻みつ薄くなり
   無上の定め万物の流転    
光峰
[2020年1月]
嘘つかぬ体重計に表れる
   数字のなかに正月の影    
穏やかに六十路の坂を踏みしめる
   念(おも)いの馳せる朝は正月     
穏やかな年の初めの往診日
   「元気ですね」とDrの声     
光峰
[2020年2月]
節分や夫婦合わせて百三十
   年を数えて豆食べきれぬ    
底冷えの吐く息白く吉田川
   静寂なりき悪夢は何処    
ウエディングベルの鳴る丘ワイキキの
   爽やかな風海の青さよ    
光峰
[2020年3月]
平穏な感謝の日々に手を合わす
   節句の朝は眩しく蒼い    
上座敷春の先取り雛人形
   揚げ饅頭に櫻ういろう    
待ちごころホワイトデーの朝が来た
   孫からの声夜は更けゆく    
光峰
[2020年4月]
幾たびの苦難乗り越え祝い日は
   紀壽の証しや満面の笑み   
一年ぶりの旬のご褒美たらの芽は
   うぐいすの鳴く吉田の川に   
わが家にも契りの如く櫻花
   コロナの自粛忘するひと時   
光峰
[2020年5月]
幾年を重ねていても嬉しけり
   変わらぬ調べ飛ぶ鯉のぼり   
鳴子ダム雪解け水の蒼くして
   早苗の遺産大崎耕土    
長(なが)の年民の安寧願う日々
    誉や高き章(しるし)輝く   
光峰
[2020年6月]
ありがとう母の恩師や百歳(ももとせ)を
   迎えし今日は笑顔の彰(あきら)   
ほろ苦き青春などあり暑い夜は
   ビールひと口染みる想い出   
利用者の笑顔と拍手全てなり
   施設慰問はコロナで途絶え   
光峰
[2020年7月]
運気ある今日の暮らしと願をかけ 
   靴ひも結ぶ玄関の朝      
 
気高くて高嶺の花やコマクサに
   暫し見惚れるコロナも忘れ    
子(ね)の年の三人目となる百(もも)壽の日
     嬉し楽しの祝いの宴      
光峰
[2020年8月]
明け方の冷ややかな風流れ来る
   今日の始まりひぐらしの声     
戦争の傷癒えぬまま敗戦日
   静かに暮れるドームの鐘は     
 
穏やかに暮らせる日々の有難し
   浄(きよ)らな風にお盆を迎え    
              光峰
[2020年9月]
【挽歌】
病との闘い竭(つ)くやわが主
   無常の運命(さだめ)天界に立つ    
車窓から広がる平野大崎の
   稲穂は揺れる黄金色して    
朝まだき秋雨の音目覚むるや
   深々被る薄手の毛布    
光峰
[2020年10月]
手づくりの心のこもる辛子味噌
   お替り進む新米の飯     
稲刈りや秋たけなわのこの季節
   台風逸れよ神仏頼み    
朝まだき秋雨の音目覚むるや
   深々被る薄手の毛布    
光峰
[2020年11月]
秋の暮れ孫生まれしの一報に
   悠(はるか)な道の幸を祈りぬ    
久々にトライクで行く紅葉狩り
   染まりゆくかなわれら夫婦も    
螽斯(きりぎりす)秋も深まり夜の更けて
   声は弱まり遠ざかるなり    
木枯しの風吹き抜ける舟形の
   鍋を囲みつ冠雪仰ぐ    
                光峰
[2020年12月]
日めくりの暦も薄くなりにける
   行く年過ごす静寂な雪     
街角の耳元流る聖歌隊
   人影まばらイブは過ぎゆく    
クリスマス若いつもりのジルバ曲
   息の途切れて筋肉疲労    
光峰
[2021年1月]
明暗を忘却の日とする大晦日
   あしたの夢を託すあら玉    
天窓の下弦の月や朝まだき
   平穏無事の一年祈る    
あかあかと燃ゆる炎に手を合す
   皆の思いは疫病退散    
光峰
[2021年2月]
うつ伏せの首をもたげて吾を見る
   孫の仕草に笑いは絶えず    
コンビニの恵方巻買いかぶりつく
   歳徳神(としとくじん)へ無言の祈り    
空白み白鳥の群れ飛んで行く
   至福のときは静かに過ぎる    
光峰
[2021年3月]
コロナ禍で遊びの達人段ボール
   もうすぐ入学東京の孫    
亡き母が祝いに戴く胡蝶蘭
   今年も咲きぬ十三回忌の春    
コロナ禍に櫻のつぼみ眺め居り
   産土神(うぶすながみ)に縋(すが)る思いよ    
光峰
[2021年4月]
待ちに待つ桜花の節に生まれ来る
   ふる里憶う人になれよと    
春本番美しき花数あれど
   待ち焦がれるやわが家の桜    
廃校の桜並木の校庭に
   行き交う人の笑みやこぼれる    
光峰
[2021年5月]
澄み渡る皐月(さつき)に泳ぐ鯉のぼり
   共演舞台は真鯉に緋鯉     
孫たちの端午の節句に託す夢
   平和なれこそ囲む食卓    
幾年(いくとせ)を重ねていても嬉しけり
    童子に帰すや飛ぶ鯉のぼり    
光峰
[2021年6月]
孫達のフェースタイムに癒されし
   六十路の初夏の一日は過ぎ     
ツーリング麦秋の波揺れる日や
   夕日に染まる舟形山よ     
紫陽花の乙女の如く花びらの
   雨のしずくに日毎色づく     
光峰
[2021年7月]
梅雨空とコロナの行方浮かぬ日々
   仕事のペンは遅遅と進まず     
久々の休みの電車人まばら
   クーラーの効く快適シート    
笹の葉に終息願い暮らす日々
   祈りよ届け疫病退散    
明け方の雨の一間のひぐらしよ
   梅雨明け宣言ようやく来たり    
光峰
[2021年8月]
史上初宮城に上陸台風一過
   遥か彼方へコロナは飛んだか    
国のため御袋を呼び弱冠兵
   憲法九条知らずに散りぬ    
盂蘭盆会わが家の蓮に好きな餅
   供えし迎ふ母十三回忌    
光峰
[2021年9月]
ゆく秋の雨や虚しく頬過(よぎ)る
   泉下の社長小祥忌の朝     
邸中の金木犀や漂えり
   夕暮れ深く星流れ居り    
あけび食む旬の味覚の広がりぬ
   ススキは揺れてため息ひとつ    
光峰
[2021年10月]
紅葉を湖面に映す潟沼の
   秋真っ盛り休息の午後
新米の季節になりし吾娘への
   搗き立ての味梱包急ぐ
芸術の秋に欠かせぬもみじ葉の
   色鮮やかに山飾り居り
                 
            光峰
[2021年11月]
娘より思いのこもる花一重
   窓の陽やわら秋は深まる
世の中の矛盾の壁と向かい合う
   孫の笑顔に癒されながら
秋雨の音や静かに降る夕べ
   冬は最早か毛布を被る
            光峰
[2021年12月]
初時雨喪中のはがき目を通す
   無常の定め募る寂しさ
寒空を窓越し眺め外出でず
   孫を抱きつ居間を散策
温顔な暮らしの日々や六十路旅
   微笑み返し絶えることなく  
             光峰
光峰[2022年1月]
餅雪を踏みしめながら雪を掻く
温い吐く息元旦の朝
大寒の暦通りの冷える朝
待ち遠しきや春の訪れ
デイルーム広きホールのひと時に
さんさ時雨はめでたく響く
光峰
[2022年2月]
恵方巻商戦最中(さなか)北北西
   運気に賭けて頬張る夕べ
早朝の白鳥飛ぶを眺め居り
   静かに流る平和な時よ
北の天満宮で求む枝垂れ梅
   芽吹きてわが家早春気分
            光峰
[2022年3月]
雛人形穏やかなりしデイルーム
   栄華を偲ぶ夕暮れ時よ
連日の戦禍の及ぶウクライナ
   春待つ聖堂凛として建つ
春うららマウスに興味孫だまし
   仕事にならぬ一日は暮れ
名残り雪餌を求めてお昼時
   つがいのカケス庭に戯る
断水の復旧完了無線の報
   ひねれば出るを常と思うな
             光峰
[2022年4月]
蕗のとう食卓飾る夕の暮れ
   程よい苦み食進むなり
満開の桜ライトに照らされし
   咲き競うなりコロナを他所に
夜桜にピンクムーンのコラボショー
   ロシアの空も等しく照らす
              光峰
[2022年5月]
一九四六年五月三日を忘るまじ
   熱き指導者天に召さるる
五月晴れ鳴瀬の歩道母として
   眺る山に残雪浮かぶ
白藤の甘い香りと鯉のぼり
   孫と戯る連休一過
「気を付けて」母の言葉にピースする
   子等の笑顔にバスは過ぎ行く
浅草の芋羊羹に舌鼓
   抹茶の泡や旨味を誘う 
          
               光峰
[2022年6月]
衣替え恥ずかし嬉し夏服の
   乙女心や白の眩しさ
蹲(つくばい)に写りし空の青さにも
    夏本番の近づく気配
捲(めく)る毎黄ばみは深く穂の先を
     渡るそよ風麦秋近し  
              光峰
[2022年7月]
矢のごとし光差し込む庭の園
   霧の途切れて薔薇や彩る
一つ咲きまたひとつ咲く百日草
   今年も楽し道端花壇
大の字の対角線に寝るベット
   深い眠りや奥方不在
戻り梅雨晴れの木陰の合間小間
   ニイニイゼミの声鳴き止まぬ
初夏(はつなつ)や産声上げる丑の刻
   皆が願ふは聡い世の人
順調に夏の兆しの陽射し受け育つ
   稲穂に泥水襲う
政(まつりごと)治山治水に命賭す
   翁の惨苦や未だ届かず
               光峰
[2022年8月]
巡り来る群青(ぐんじょう)の空ヒロシマに
   今日も語り部核は要らぬと
ヒロシマの悲劇を永遠(とわ)に忘れまじ
   被爆電車は街走り行く
敵艦に皇國(みくに)のためと散華(さんげ)せし
   消えぬ戦禍を語り継がねば
先人の歴史の遺産守るべし
   九条に忍び寄る足音
気がつけば戦場に居る平和ボケ
   安眠できぬ九条二項
迎へ火に麦わらを焚く庭の先
   揺らめき降りぬご先祖の霊
青春は密と唱えし監督の
   標(しるべ)の証(あかし)優勝旗に見ゆ
二十日盆過ぎし虫鳴く宵の口
   一日を終えひとときの凉
                    光峰
[2022年10月]
人の世を見守る御社(みやしろ)柏手に
   響(とよ)むや昼下がりのさば雲
手作りの心のこもる辛味噌に
   食は進みし看貫(かんかん)後目(しりめ)
三日月と明けの明星見渡すも
   今年は穫れぬとコメ農家の友
                   光峰
[2022年11月]
暮れ速き明るさ残る大空を
   彩りながら日は沈みゆく
秋風に揺られて散りしもみぢ葉や
   川の淀みに留めて居りぬ
穏やかな秋互市や三が日
   路上文化の活気漲(みなぎ)る
              光峰
[2022年12月]
早すぎる残る暦の一枚に
   最後の願い元旦の計
小春空喪中はがきの届きたる
   立冬の風しばし眺めぬ
ピラカンサ忙し集う小鳥たち
   命を繋ぐその赤き実よ
クリスマス神も仏もキリストも
   ケーキを囲み祝う団欒
一年(ひととせ)の数多の他念たずさえて
    明日への響き除夜の鐘聞く  
                 光峰
[2023年1月]
あらたまに思いを馳せる布袋尊
   世の太平に願いを籠めて
微笑めば微笑み返すデイルーム
   日々の暮らしの何気無きこと
古希近し余寒の寝床滑り込む
   有難きかな湯たんぽ添い寝
              光峰
[2023年2月]
立春を待たずほころぶ盆栽の
   梅一輪に団欒の酒
南南東目がけてガブリ恵方巻
   『うまい!!』の一言逃げ去る運気
介護棟夜は眠らず利用者の
   スノームーンにコールや響く
路地裏の花穂(かすい)膨らむねこ柳
   ツグミ飛び交い春はすぐそこ
                  光峰
[2023年3月]
ほろ苦く春を告げるや蕗の薹
   朝の食卓和やかに過ぎ
雛人形どじょう掬いに笑う門
   デイの節句の一日は暮れ
鬼潜む人の輩(やから)の腹の底
   そんな世の中生抜いて来た
バースデーカードと思い封開く
   介護保険に一喜一憂
古(いにしえ)のひな人形は凛として
   穏やかなりし栄華を偲ぶ
水ぬるむ白鳥見えぬ鶴田川
   北へ帰るや春はすぐそこ
              光峰
[2023年4月]
HbA1c高しの診断に
   ウオーキングで習慣チェンジ
春雨に濡れて短し桜花
   儚い時の音(ね)心の癒し
互市や久方ぶりの再会に
   話題は健康年金談義
                光峰
[2023年5月]
白藤の甘く漂う軒先の
   今日も一日清しい気分
孫たちの帰った後のわが家にも
   静かな時間有りと思うや
鯉のぼり五月の風を浴びながら
   泳ぐや孫の健やか願ふ
五月晴れ寝起きの孫をトラクター
   乗せて畑の満面の笑み
雪解けの水かさ増して鳴瀬川
   大海原に呼ばれて注ぐ
                 光峰
[2023年6月]
梅雨(つゆ)の節憂いの通り傘マーク
   ツーリングの旅やめの無念よ
雪解けの冷たき水と水芭蕉
   色鮮やかに季節を伝へ
雨の降る紫陽花ぬれる道すがら
   夏待ち遠し足止め見入る
訃報知る憂き世の定め常なれど
   痛む心の計りぞ知れぬ
6月の薔薇も霞むや花嫁の
   君しか見えぬ幸せゲット
                  光峰
[2023年7月]
ドック後の体重減に努めるも
   変わらぬ食は文化なりけり
 
今日も雨明日も雨かよ一日の
   心は重く生業(なりわい)の汗
待ちに待つ梅雨明けなるや明(あ)か時(とき)の
   蝉の競演目覚まし代わり
                     光峰
[2023年8月]
孫たちの成長を見る盂蘭盆会
   歳重ねるや吾も顧み
打ち水の飛沫の粒や頬ぬらす
   拭う仕草に色香漂ふ
孫たちと花火に観入る夏まつり
   思いを馳せるウクライナの空
陽が陰り年に一度の迎え火に
   戦火無き日々祈りを込める
夏祭り夜店にはしゃぐ子らの声
   ふるさとの夏足早に過ぎ
                   光峰
[2023年9月]
防災の日の呼び出し訓練心待ち
   着信音のメッセージ
酷暑耐え稲田広がる一面の
   うな垂れし穂刈り取りを待つ
参加者の手足は小さく揺れ出して
   敬老の日の余興沸き立つ
秋の陽の沈み呼ばるる晩御飯
   至福の時や天ぷらの味
初めての敬老の日のメッセージ
   そんな歳かと孫への笑顔
                  光峰
[2023年10月]
道すがら真紅の姿彼岸花
   斜陽の光射して吹く風
コーヒーの香りほのかに誘われて
   空は冷たき秋朝(あきあさ)の美味
秋の色コロンの香り夜の明けて
   金木犀の華やぐ季節 
                    光峰
[2023年11月]
晩秋の冷たい雨が頬伝う
   冬の間近な足音聞ゆ
車窓からまだついて来るお月さま
   孫のおしゃべり達者な夜更け
初霜に甘み増すかや洒落(しゃれ)柿を
   自歯に恵まれ噛める喜び
秋深く年に一度の健診の
   体重計に一喜一憂
伝統の人の賑わう互市や
   「翁」の偉業を育む文化 
                光峰
[2023年12月]
ピラカンサ代わる代わるに鳥集う
   赤き実求む庭の師走よ
風呂の蓋開けて漂う柚子一つ
   冬本番の疲れを癒す
クリスマス神も仏陀(ぶっだ)もキリストも
   グラス片手に目出度い夕べ
年末の大掃除にて発見す
   しばし足止め想い出の品
子等帰省年越し準備整いて
   除夜の鐘待つ新得のそば      
                 光峰
[2024年1月]
隔世の感の漂う新年を
   迎えて屠蘇に平和を託し
初春の鶴田の川にひかり満ち
   水面(みなも)に群れる白鳥の声
初詣はしゃぐ孫らに導かれ
   オモチャ売り場へなされるままに
松の内しあわせ気分夢を見た
   これぞ初夢一年の計
つくばいの水に映(うつ)りし南天や
   古希を迎える正月に映(は)え
                  光峰
[2024年2月]
コンビニの自分で買って食べるチョコ
   二月若者健気(けなげ)な姿
朝早く飛ぶ白鳥に魅せられて
   春の訪れ待ち侘びて居り
寒空に鬼追い出され何処やら
   春一番に凍えていぬか
豆まきで幸せ願うひと時や
   福は内今年は鬼も内
マリンバの如く会話のとき弾む
   豊かな夕べ舌鼓(したつづみ)打つ
                    光峰
[2024年3月]
晴れ姿巣立つ子等の学び舎に
   着飾る母よ百花繚乱
啓蟄の時季となるかや虫たちも
   春一番にたじろぐ姿
古希祝い五人の孫に囲まれて
   余韻に浸る至福の時間(とき)よ
春一番見えぬものとのお付き合い
   仕事帰りに点鼻薬買う
小雪降る寒気未だに残しつつ
   梅花眺めつ供養の参り
                  光峰
[2024年4月]
春爛漫街の装い変わる季(すえ)
   桜新緑新調スーツ
恒例のライトアップに汗流す
   思いを込めて桜ひとひら
春の空見上げて見るや薄明かり
   杉の花粉か隣りの黄砂
孫だまし青空深く過ごす日や
   桜吹雪に舞う鯉のぼり
散る様もやはり絵になる桜花
   己(おの)が人生まだ未完
                   光峰
[2024年5月]
高校生パンをかじりてスマホ見る
     髪を気にしつ始発の電車
薫風に乗って泳ぐや鯉のぼり  
     大空高く夢の宅配
幾とせを重ねていてもこの節は
     心の躍る飛ぶ鯉のぼり
柏餅食べて季節を噛みしめる
     一日ぶらり家に篭(こも)りぬ
連休の思い出列車走り去る
     陽射し眩しく車窓の日暮れ
                   光峰
[2024年6月]
道すがらのどを潤す湧き水や
   ひと息つけばうぐいすの声
灰色が青水無月に広がりて
   雨の季節や間近に迫る
雨に濡れ首(こうべ)を垂れる紫陽花の
   鮮やかな青暫(しば)し魅せらる
曲(ごく)水(すい)の宴雅びな日曜日
   古(いにしえ)の風ほのかに流れ
君くれし薄紫の釣鐘草
   自然(じねん)の息吹あふれこぼるる
                       光峰
[2024年7月]
梅雨時の雲の切れめを逃すまい
   麦の刈り取り一気に進む
明け方の蝉の合唱目が覚めて 
   今日も猛暑の予報が如く
ねむの木に歓喜花咲く日暮れ時
   撫でて眠らす幼き想い
獅子舞を踊る姿が目に浮かぶ
   恩師逝くとのメール届きぬ
天の川ゲリラ豪雨に苛(さいな)まれ
   鵲(かささぎ)来ぬや出逢い叶わず 
                         光峰
[2024年8月]
盆棚を吊りし迎えるご先祖の
   姿身近に香は揺らぎぬ
あれこれと理由をつけて後回し
   屋敷の庭は草の住みかか
猛暑にも働きバチや忙(せわ)しけり
   今日を限りと鳴く蝉虚(むな)し
猛暑日の真昼野良猫居場所なく
   空き家木陰で伸び切っている
加藤屋の冷やし中華に舌鼓
   鳴瀬の川の水嵩増しぬ         
                      光峰
[2024年9月]
台風の遠ざかりしや雨上がり
   庭の鈴虫鳴きはじめたり
脱ぎ散らす靴の揃えを諭しつつ
   孫と戯る一日は過ぎ 
澄み渡る青空見上げ深呼吸
   猛暑の日々は遠い日となり
爆夏の汗の滴る日は続き 
   すすき梅雨入りひと息つきぬ
秋彼岸母や上へと帰り道
   清明(さやけ)き空の飛行機雲よ
          
                       光峰
[2024年10月]
ひとめぼれ獲れたての味妻として
   都会に暮らす娘に届け
手づくりの心のこもるしそ巻に
   食欲の秋飯は進みぬ
 
昼ごはん金木犀の隠し味
   茶の間漂う秋の訪れ
知り合いのキバナコスモス咲き乱れ 
   わが家の庭に裾分の種
猛暑抜け秋到来と思いしや
   つるべ落としに空よ暮れ行く 
                      光峰
[2024年11月]
ダイエット決意新たに始めるも
     秋の味覚に冬へと延期
朝靄に淡く輝く陽の出(いづ)る
     今日も一日よき日の予感
潟沼の枯葉を踏みし辿(たど)る道燃ゆる
     もみぢの錦織りなす
伝統の秋互市や掛け声と
     夕陽にけむる翁のお姿
秋晴れに望みを託しさつまいも
     掘ればサイズは孫の口用    
                      光峰
[2024年12月]
ピラカンサその実ついばむ小鳥たち
     つるべ落としや帰りの忙(せわ)し
風呂の蓋開けば柚子の漂える
     からだ労(ねぎら)う至福の時よ
頬伝う冷たき風の過ぎ去りぬ
     淀む世相に一面の雪
踏み締める積もる木の葉や冬は来る
     見上げる小枝完熟の柿
七五三お宮参りに撮影会
     帰りの車爆睡の孫     
                      光峰
[2025年1月]
ご縁あり仙台門松復元す
    男結びに心地よい汗
元旦の朝日を受けし整然と  
    メタセコイアの着雪並木
屠蘇気分孫と戯る一日の
    黄昏れ時や湯たんぽ支度
孫として朝風呂浸かる三が日
    湯船の中に彩るオモチャ
先人の血と汗の史(ふみ)学びたる
    平和の日々や今に受け継ぐ
                     光峰
[2025年2月]
正月の美食が因(ちなみ)血糖値
     恵方の節や試練は続く
ダイエット僅かな成果表わるる
     量りに乗るも楽しひと時
恵方巻き吉方探す暇も無く
     かぶりつくかな春はすぐそこ
目に止まるエンゲル係数上昇と 
     報じる記事に頷く今朝は
恒例のロイズ義理チョコ戴いて
     お返し迷うホワイト近し
                      光峰
[2025年3月]
学び舎を巣立つ農業高校生
      思い出飾るサイネリアの鉢
陽だまりの淡く芽吹きぬ蕗の薹
      未だ冷たく頬突く風よ
ぎこちなくアロハの指をかざしつつ
      出来たと三歳孫のどや顔
上着脱ぐ待ちわびた春到来も
      花粉を運ぶ受難の季節
玄関を開けて春風枝垂れ梅
      蕾膨らみ香りを誘う
                    光峰
[2025年4月]
習慣病たたかう日々のダイエット
      背広のボタン留まる喜び
春語る役割終えし葉桜の
      季(とき)は過ぎゆく虚しき姿
風よ吹け孫ら見守る鯉のぼり
      明日へ飛べ飛べ思いがままに
散る様も美くしくあれ夜桜の
      ライトに映える麗(うら)らかな風
壁でなく橋を築こう教皇の
      平和連帯世界は悼(いた)む 
                     光峰
[2025年5月]
日は暮れて白ふじ香る食卓の
      粗食も旨し贅沢な時(とき)
幼少の忘れぬ味や柏餅 
      食べて節句の孫らへ祈願
菖蒲(あやめぐさ)剣のごとく伸び伸びと
      冷たき雨は頬より伝(つと)う
冷える朝ウォーキングの道すがら
      田植え日和や鶯の声
障子開け鮮やかなるや藤の花
      心の和む新緑の朝
                     光峰
[2025年6月]
人生の荒波を超え浜人の
      苦労に耐えし翁(おきな)の笑顔
梅雨時や気持の滅入るときあれば
      心を癒すアジサイの花
匂い立つ色鮮やかな紫陽花の
      曇天の下梅雨を知らせる
梅雨の入り部屋の鉢物移し替え
      庭にしばらく水分補給
窓の外雨に打たれし紫陽花の
      明日(あした)の色や誰が知るやら
                      光峰
[2025年7月]
短冊に思いを込めて七夕の
      真夏の夜の夢天まで届け
夜の更けて夢を叶えよ流れ星
      僅かな時間消えて叶わず
採れたてのキュウリに味噌をかぶり付く
      灼熱の夏贅沢気分
ネジバナの群れて咲きいる陽だまりを
      歩みを停めてしみじみと見る
二度三度水風呂浴びて猛暑日の
      草とたたかう大粒の汗
                     光峰
[2025年8月]
猛暑日に涼を求めし浜辺より
      磯の香りに孫とたわむる
夏祭りおでん片手にはしゃぐ子ら
      賑わい久し夜店うるおう
涼風にゆるりと揺れる燈籠や
      今帰りしか先祖の御霊
門火焚く黄泉に帰るや御仏の
      秋彼岸までしばしの別れ
目覚むるや蒸し暑き夜の盆の明け
      ひと足先に虫の競演
                   光峰
[2025年9月]
秋桜の葉先に止まる赤トンボ
      風にゆられし夕暮れ時よ
青空にコンバインの音鳴り響く
      残暑の射光黄金の実り
黄金色たわわの稲穂風に揺れ 
      明日は快晴収穫前夜
もみじ葉の剪定終えし枝振りの
      姿現わる秋はすぐそこ
夕空の晴れて輝く曼珠沙華
      そよ風に揺れ屋敷を飾る
                    光峰
[2025年10月]
初めての高齢者講習通知あり
      黄花コスモス騒めいて居り
酷暑過ぎ実りの秋の夕の暮れ
      友と語らう柿の甘さよ
はなみずき色づき始め車窓より
      深まる秋や雨つゆにぬれ
吊るし柿数多が好む口元の
      緩むや午後の小昼は未だか
秋空に焼き芋香る庭先の
      準備万端バターの出番
                   光峰